イエメンのシバーム旧城塞都市に高層建築が並ぶ！これが「砂漠のマンハッタン」

シバームは、紀元前8～前3世紀に栄えたイエメンのハドラマウト王国の首都だった街で、現在も約7000人が住んでいます。砂漠の中に忽然と現れる背の高い建築物が非常に特徴的で、その様子は「砂漠のマンハッタン」という異名をとります。

500以上も残っている5～9階建ての建物が密集しています。この建物の材料は泥！そのせいか、色合いも質感も、なんともいえない趣を醸し出していますね。

街のすぐ後ろは迫りくる砂漠。高層の建物が多い理由は、この環境ではなかなか都市を横に広げていくことができなかったため。さらに、洪水が起きた場合には低い建物だと根こそぎ流されてしまうのです。自然環境の厳しさがシバームを高層化させたのですね。

建物は安定を保つように上に行くほど細くなっています。下部は洪水のときに水が流れていきやすい構造。一見するとぎっしり密集するマッチ箱のようなかわいらしい街並みですが、目につかない部分にさまざまな工夫がされているのですね。

もうひとつの高層化の理由は、外からの攻撃を防ぐため。シバームは乳香を特産品とする裕福な街で、遊牧民などの他者から攻撃に遭うことが多かったのです。建物同士を上部でつなげて行き来するという、籠城にも都合の良い造りでした。

角度や天候によっては、本当にミニチュアのような質感に思える景観です。泥でここまで見事な建築ができるものなんですね。

泥でできている建物が密集している上にまわりが砂漠なので、天候によっては大変ほこりっぽい環境での観光となるでしょう。決して多くはありませんが、街に佇む土産物屋などを見つけて避難しながら歩き回るといいですね。

窓には美しい透かし彫りが入っていて、イスラムの芸術センスが垣間見ることができます。窓ガラスは入っておらず、すだれなどで日光を防ぐのだそう。年中開けっ放しで全く問題ない気候なのですね。

建築物の大半は、今も人が住んでいて日常生活を送っているのだそうです。台所や居間は下層にあり、あまり外出しない女性は上階にいることが多いなど階ごとの役割も決まっていて、男性、女性、子どもが同じ部屋にいるということはまずないのです。

シバームの城壁都市が世界遺産に登録されたのは1982年のこと。まだまだ危険なイメージが大きいイエメンという国ですが、世界遺産登録によって徐々に観光客も増えています。歴史を感じる街や建造物の中で、今もそのまま普段通りの生活を送っているという不思議な景観をシバームまで見に行ってみませんか？