中国最古のビール工場、青島ビールの歴史を博物館で知ろう

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1903年創立の中国最古のビール工場が、青島啤酒(チンタオヒシュ)。主にドイツ人の資本で創業された青島ビールは、青島がドイツの租借地だったからです。その後日本がかかわり、30年以上も大日本麦酒株式会社の自社工場として操業していた歴史もあります。旧式の機械も展示してあり、見ごたえがあります。ろ過しないビールを味わうこともできて、サイコーですよ。

中国青島(チンタオ)市

中国青島市は昔からの漁村でさびれた村でしたが、軍事施設を建てて兵士をおいたことから栄え始めました。

そして、1898年にドイツが膠州湾一帯を99年間の期限で租借しました。これが村のさらなる発展へと導いたのです。

ドイツは、ドイツ風の建築から鉄道に至るまで整備し、理想的な植民地を作り上げようとしました。

株式による民間企業ですが、ビール醸造所も設けられました。これが青島ビールです。

第一次世界大戦が勃発すると、イギリスと同盟を結んでいた日本が、ドイツに宣戦布告をして、青島への攻撃を始めます。

青島に駐在していたドイツ軍が破れ、日本が支配。

1919年のベルサイユ条約によりドイツが、日本へ青島での権利と利益を移行することが認められ、青島ビールも大日本麦酒として、日本の資本下に置かれることになりました。

しかし、中国の民衆による抗議活動が起こり、わずか3年後には中国に返還。その後、日中戦争が起こると、日本はまた青島を占領しますが、1945年の日本の敗戦によって、再度中国国民党政府の支配におかれます。

青島啤酒(チンタオヒシュ)

歴史

1903年に中国在住のドイツ人、イギリス人、アメリカ人、フランス人の資本によるビール醸造所、アングロ・ジャーマン・ブリュワリー・カンパニーが、青島に設けられました。(本社は香港)

株主はドイツ人が多かったこともあって、ドイツのミュンヘン式でビール醸造が行われ、3年後にはミュンヘン国際博覧会で金賞を受賞しました。

同年の年間醸造量は120万リットルにもなり、中国各地へ送られました。青島ビールは、中国に在留している人たちに、喜ばれて飲まれたようです。

日本海軍に膠州湾を閉鎖されたために、各地へビールを送ることが出来なくなった青島ビールは、1914年製造を中止。

それに伴い、ドイツ軍は工場を傷病兵のための病院に使用することを決め、多くの兵士が運ばれてくるようになりました。

しかし3か月後にはドイツ軍は破れ、日本軍の管理下におかれますが、日本軍も病院として使用しました。

その後休業していた醸造所を、大日本麦酒株式会社が買収して、自社工場としてビールを製造しました。

ちなみに大日本麦酒株式会社は、現アサヒビール、現サッポロビール、恵比寿ビールを製造していた日本麦酒が合併してできた会社です。

青島ビールは、30年以上大日本麦酒株式会社として操業していましたが、1945年の日本の敗戦によって終わりを迎え、中国の国営企業として生まれ変わりました。

青島ビールの原材料

おいしいビールを造るには、品質の良い二条大麦がかかせません。

青島ビールは醸造当初、オーストラリア、カナダ、フランスから大麦麦芽を輸入して、造っていましたが、現在は自社でマッシュを行っています。

大麦も浙江省寧波産を使用していたこともありますが、中国全土で生産量が減少していることから、世界各国から品質のよい二条大麦を輸入しています。

青島市の近くにある標高1132.7mの崂山(ラオシャン)。

中国最古の詩篇である詩経に「山川悠遠にして、維れ其れ労す」と載っていて、もともとは労山というようです。

海の中にあり、海上第一名山の景勝地として有名で、その泉の水は「清冽純浄」で、ほんのりと甘さを感じる良質なミネラルウォーターです。

青島ビールはこの泉の水を使って、醸造しています。

ビール特有の苦みはホップによるものですから、醸造するためには欠かすことができません。

青島ビールでは麦汁の煮沸の終わりごろに、清涼なTsingtao aroma(チンタオアロマ)を与えるために、ホップを追加投入しています。

またホップの成分であるポリフェノールは、大麦がもっているタンパク質と結びつくことで、下に沈んでいきます。

これによって、ビールを濁らせる原因となる余計なたんぱく質を除去することができ、清澄なビールができあがるのです。

青島ビール博物館

創業の1903年から100年後の、2003年に建てられた博物館。

ドイツや日本、中国がかかわった青島ビール100年以上の歴史を知ることができる、貴重な場所です。

ビール瓶の噴水。

創業当時の旧式の機械も展示されています。

下部のモーターは、ドイツバイエルン州ミュンヘンにあるシーメンス(Siemens AG)のもの。

シーメンスは電子機器などの製造会社から発展して、現在は幅広い分野を手掛けていて、MRI装置や補聴器などでは市場を占めています。

さすが創業がドイツなだけはありますよね。このモーターは現在は使えないので、世界で残っているのは、この博物館に展示されているものと、ドイツのシーメンスにある2台だけ。

お楽しみの試飲はおつまみ付きです。このおつまみがおいしいと評判ですが、ビールだって負けてません。

ろ過する前のおいしいビールを味わうことが出来ます。

青島ビール博物館(青島啤酒博物館)
住所:
中国青島市北区登州路56号
営業時間:
8:30~16:30
アクセス:
浙江路天主教堂(聖ミカエル大聖堂)より車で約13分
定休日:
無休
電話番号:
+86 532 8383 3437
料金:
大人50元

まとめ

人類が偶然にも発見したお酒。それから工夫をして、いろいろな種類のお酒ができました。

表舞台にはたたないけれど、確実に歴史の中にあるのが、お酒ですよね。

青島ビールもその一つで、ドイツ、日本、中国と時代に流されながらも、現代まで存在していることがすごいことではないでしょうか。

青島啤酒博物館の近所にある、青島啤酒街で飲むビールよりもおいしい(出来立てなうえにろ過前だから酵母が生きていて味わい深い)と評判ですから、ぜひ足を運んでみて下さい。

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