スペイン世界遺産クエンカの見どころ！マドリッドからの日帰り観光で岩山に築かれた城塞都市へ

カスティーリャ＝ラ・マンチャ州の東部、クエンカという町の旧市街にあたるのが、「歴史的城砦都市クエンカ」です。首都マドリッドからスペイン第3の都市バレンシアに向けて、高速列車AVEに乗ること1時間弱。フカル川とウエカル川に挟まれた岩山の上にあります。

9世紀のこと。コルドバ防衛の拠点の一つとして、イスラム教徒たちがここに城砦を建設したのが、そもそもの始まりでした。

標高は約1000m。峡谷と断崖絶壁で守られた難攻不落の砦でしたが、1177年、9ヶ月にも及ぶ攻防戦の末、カスティーリャのアルフォンソ8世の手によって陥落。それ以降は、キリスト教徒の町として発展してきました。

旧市街の散策は、ウエカル川に架かる橋（バレンシア門の跡）が出発点です。とりあえずは断崖の上の町を目指して坂道を上がっていけば、自然と旧市街の中心部、マヨール広場へと至ります。

ウエカル川の橋のたもとから、歩くこと500mあまり。市役所のアーチをくぐったところにあるのが、町の中心、マヨール広場です。

広場の周辺には飲食店はもとより、みやげ物店なども並んでいます。特にクエンカは民芸風の陶器や土器の産地としても有名ですから、ちょっとのぞいてみてはどうでしょうか。

岩山の上とはいえ、基本的には幅200～300mぐらいの台地になっていますから、広場も決して狭いというわけではありません。市役所もあれば大聖堂もありますし、車で上がって来ることも可能です。

クエンカ大聖堂の建設が始まったのは、12世紀も終わりに近づいた頃のこと。アビラの大聖堂と並び、スペインでは最初期のゴシック様式の聖堂として有名です。

優美な外観をしているわりに何かしら物足りなさを感じてしまうのは、尖塔がないためかもしれませんが、それは戦争による破壊が原因。広場に面するファサード部分も、20世紀の初頭に復元されたものです。

厳かな雰囲気の中にも、ステンドグラスから入る光が、堂内を色鮮やかに彩っています。各所に施された装飾を見て歩くだけでも楽しいものですが、内陣の奥にある礼拝堂や聖人の絵が飾られた参事会室など、他にも見るべきものはたくさんあります。

ただし、内部はゴシック一辺倒というわけではありません。修復された時期との関係もあり、ルネサンスをはじめ、多数の様式が混在しています。

マヨール広場でひと休みしたら、さらに町の奥へと散策を続けましょう。歩いても南北1km程度の町ですから、時間もさしてかかりません。

なお、広場から北へは平行した2本の道が延びていますが、どちらの道を歩いても、サン・ペドロ教会のところに出てきます。

サン・ペドロ教会からさらに北へと進むと、旧市街の北端・カスティーヨ門にたどり着きます。絶好の撮影スポットをお探しの方には、カスティーヨ門を出てみることをおすすめします。

さて、旧市街の北端まで行って納得したら、もう一度マヨール広場まで戻り、今度はクエンカ大聖堂の右脇の道へと入って行きましょう。その先にあるのが、14世紀に建てられた3軒の邸宅「宙吊りの家」です（「州立クエンカ博物館」など、他の見どころもあり！）。

ただし、その言葉の意味を理解するためには、道を少し下って、崖の外側に出てみる必要があります。対岸へと架かっているサン・パブロ橋の中央辺りから振り返って見ると、3軒の建物の本当の姿がわかります。

土地が絶対的に不足している町のこととはいえ、何もそんな崖っぷちに建てなくても……と思ってしまいますが、特に木製のバルコニー部分は完全に崖の外へと突き出しています。

サン・パブロ橋のたもとの道を下っていくのが、帰り道の定番コースですので、その時にはちょっと上を向いて確認してみてください。バルコニーの突き出ている様子がよくわかります。

ただし、宙吊りの家は廃屋というわけではありません。中はキレイに補強・改装されて、1950年代、60年代の前衛的な作品を展示する「抽象芸術美術館」として活用されていますし、レストランも入っています。室内からの眺望も抜群ですので、ぜひとも立ち寄ってみてください。

宙吊りの家の写真を撮るには、たしかにサン・パブロ橋は最適なポイントではあるのですが、高さ45m、長さ105mの橋は、さすがに高所恐怖症の人にはちょっと無理かもしれません。

今の橋は1902年に造られたものですが、そこには以前、石橋が架けられていました（1883年に崩壊）。対岸にあったドメニコ会の修道院との往来を確保するためです。もちろん、その修道院が姿を変えたのが、上の写真の中のバラドール（4つ星の国営ホテル）というわけです。

なお、橋を渡り切って、対岸の道を下ってもOKです。結局は、散策の出発点だったバレンシア門のところまで降りてきますし、谷を隔ててクエンカの家々や断崖の様子を眺められる分、こちらのコースの方が楽しめるかもしれません。

スペインの世界遺産「歴史的城砦都市クエンカ」について紹介してみました。高速列車AVEを使えば、マドリッドからの日帰り観光も無理なくできますし、あるいはバレンシアへの移動中に途中下車するという手もありますね。

断崖の上に築かれた町はなんとも不思議な魅力を備えていますので、スペイン旅行の際にはぜひ一度立ち寄ってみてください。