【フランス】世界遺産「フォントネー」「サン=サヴァン」ロマネスク期の両極端な建物の魅力に迫りました

5,124

views

0

今回はフランスの2つの世界遺産フォントネーとサン=サヴァンをご紹介します。ほぼ同じロマネスク期に作られた建物ですが、両極端と言っても良いほどに異なるのです。一方は彫刻などの装飾が皆無、もう一方は埋め尽くすほどの壁画が描かれてたり・・・。そんなフランスの世界遺産、ご覧アレ!

フォントネーのシトー会修道院

フォントネー修道院は、ブルゴーニュ地方コート=ドール県モンバール市内にあります。フランス国内のシトー修道会の建造物としては最古のもので、1981年に世界遺産に登録されました。

1115年ベネディクト修道会から、「聖ベネディクトの戒律」をより厳格に守ることを目指してシトー修道会が設立されました。その3年後にシトー修道士会を立ち上げた、クレルヴォーのベルナルドゥスによってフォントネー修道院が設立されました。
13世紀には王家の保護により王国修道院となり、16世紀まで発展していきました。

王家の保護を受ける代わりに、王家の影響も避けられなかった修道院は、18世紀には運営方法や資金繰りに困って行きます。フランス革命の際には売却され、100年ほどは製紙工場に転用されました。
20世紀に入って更に所有者が変わり、修道院の姿を取り戻すために修繕が行われ、現在は一部が公開されています。

シトー修道会は禁欲的な生活を心がけており、ロマネスク様式で建てられた修道院は外見も内部も彫刻や壁画などの装飾を一切そぎ落とされています。必要最低限のものだけで生活してきた修道士たちの生活が想像できるようです。

中庭を取り囲む回廊の周りに造られた、教会、寄宿舎、教会参事会室(チャプターハウス)、暖房部屋、鳩小屋、鍛治場などが残っています。食堂は修繕により復元されました。

教会

1127年から1150年に十字形に設計された教会で、中庭を囲む回廊の辺の一つが教会の則廊と接しています。

アーケードを作る柱にはシトー修道会の会則を刻んだレリーフがついているそうです。

教会の中には12世紀の聖母子像が飾られています。これは隣の村の墓地で野ざらしになっていたものでした。

チャプタールーム(教会参事会室)

天井はしっかりとしたリブのついたヴォールト造りになっています。
修道士たちは毎朝、労働や祈祷などの日課の前にこの部屋に集まって、部屋の名前にもなったようにベネディクトの戒律の一章を読みました。また、他の修道院と情報交換をするのに使ったり、修道院長を選挙で選んだり、過ちに対する後悔ざんげにも使われました。

寄宿舎

大きな寄宿舎で、15世紀に屋根を葺きなおしました。もともとは交差ヴォールト天井でしたが、火事で消失した後は、栗の木でアーチ型に梁を渡した天井になっています。ベネディクトの戒律では個室を認めていないため、修道士全員でこうした広い部屋の床に藁布団を敷いて寝ていました。

鍜治場

森の中にあり、この修道院では近隣で採れる鉱物を用いた製鉄業や冶金業を行っていました。恐らくヨーロッパで最古の冶金工場だろうと言われています。
50メートルもの長さの建物で、交差リブ・ヴォールトの天井とそのアーチを支える柱があります。またフォントネー川の流れを変えて、水車で槌を動かしていました。

フォントネーのシトー会修道院(Abbaye de Fontenay)
住所:
Montbard 21500
アクセス:
モンバール駅から車で10分
営業時間:
1月1日~3月25日
 10:
00~12:00、14:00~17:00
3月26日~11月13日
 10:
00~18:00
 ガイドツアーあり。10:
00、11:00、12:00、14:00、15:00、16:00、17:00
11月14日~12月31日
 10:
00~12:00、14:00~17:00
定休日:
なし
電話番号:
+33 3 80 92 15 00
料金:
ガイドなし 一般10ユーロ、26歳以下、及び学生 7ユーロ
ガイドツアー 一般12.50ユーロ、26歳以下、及び学生 7.90ユーロ
※ガイドツアーのない時期は時間が変わる可能性あり。
※双眼鏡、三脚不可
※歌、スケッチは事前に許可が必要

サン=サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院付属教会

サン=サヴァン・シュル・ガルダンプ修道院付属教会は、ポワトゥ・シャラント地方ヴィエンヌ県サン=サヴァンにある、ベネディクト修道会の修道院に付属する教会です。ロマネスク期の壁画が良好な状態で保存されていることから、1983年に世界遺産に登録されました。

教会の壁画は11世紀から13世紀頃にかけて作成されました。権力者の援助もあり、そのころが修道院として最も栄えている時代でした。
その後の16世紀以降、カトリックとプロテスタントによる所有権争い、その荒廃から修道院維持のための一部施設取り壊し、フランス革命時の兵舎への転用などで荒廃してしまいますが、19世紀に入って教会が修復され、同時に壁画も保存されました。

十字形に作られた教会の柱、壁、天井など、壁画が描かれています。壁画は、生乾きの漆喰の上に直接描くフレスコ画と、乳化作用のある材料を絵の具の固着剤として利用するテンペラ画の中間的な技法が使われていました。

ポーチには黙示録のエピソードや、一般席の使徒や聖人たち、柱には模様が描かれています。また地下の納骨堂には、この街の名前にもなった聖サヴァン、聖シプリヤンの遺体が収められていますが、その壁画には二人の生涯が描かれています。南北の翼廊にある祭室にはそれぞれ、大天使と使徒たちに捧げられています。

一番の目玉は身廊の天井画です。18メートルの高さに、長さ42メートル、幅17メートルの長いかまぼこ型のヴォールト天井には、旧約聖書から創世記、出エジプト記、ノアの箱舟や、バベルの塔などの50のエピソードが描かれ、絵本のように読んでいくことが出来ます。

サン=サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院(Abbaye de Saint-Savin sur-Gartempr)
住所:
Place de la Libération-BP9, 86310 Saint-Savin
アクセス:
ポワティエから車で50分
営業時間:
2月、3月、11月、12月
 月曜日~土曜日 10:
00~12:00、14:00~17:00
 日曜日 14:
00~17:00
4月、5月、6月、9月、10月
 月曜日~土曜日 10:
00~12:00、14:00~18:00
 日曜日 14:
00~18:00
7月、8月
 10:
00~19:00
定休日:
1月、11月11日、12月25日、31日
電話番号:
料金:
一般 7ユーロ、12歳以下無料
※パンフレットつき 一般8ユーロ、ガイドツアーつき 一般9ユーロ

最後に

いかがでしたか?
どちらの教会も「ベネディクトの戒律」を守る修道院ですが、より厳格に戒律を守る会派であるフォントネー修道院と、サン=サヴァンの修道院では随分と印象が違いました。
それぞれの違いを堪能しに出かけてみてはいかがですか?

この記事を読んだあなたにオススメの記事
  • フランス在住者が教える!南仏ニースでのビーチの特徴とビー...

    ニース空港へ着いたら、大抵の方はタクシーやバスでニース市内へと向かわれるかと思います。その時に目に飛び込んでくるニースの海の青さには、誰もがきっと感動してしまうはずです。そんなニースのビーチを100%楽しむ、とっておきの情報をお伝えします。

  • パリジェンヌも憧れる!フランス高級シューズブランド5選

    パリと言えば世界のファッショントレンドを作り出す街として有名です。エッフェル塔や建造物はもちろん、道行く人々のファッション等、街全体がオシャレで、品のある雰囲気に包まれています。CHANELやHERMES、Dior等の高級ブランドの本店が軒を連ねていて、女子なら誰でも一度はパリに行ってお買い物をしてみたいと思うのではないでしょうか。今回はそんな女子のあこがれパリ発祥のシューズブランド5選をご紹介します。

  • フランス料理で絶対おさえておきたい定番料理10選!

    みなさんは本場のフランス料理と言ってもピンと来るものありますか? 見たことはあるけど、名前がわからないと言う食べ物もあると思います。なので、今回はフランスに来たら是非試してほしい定番料理を紹介します♪

  • モンサンミッシェルに行ったら絶対買い!日本入手困難品も!...

    モンサンミッシェルで購入可能な誰もが喜ぶお土産を15商品ご紹介します。日本未入荷のフランス生まれのブランド品物やモンサンミッシェル発祥スイーツなど、自分用のお土産から相手に喜ばれるお土産探しまで、この記事を読めばモンサンミッシェルのお土産選びが楽になります。

  • フランス・コルマールの観光名所まとめ!美女と野獣の舞台と...

    戦火を逃れ今も昔のままの姿を残すフランス東部の町コルマール。アルザス地方特有のコロンバージュ様式の建物は、まるでおとぎの国へ来たのかと錯覚するほどの美しい町並み。美女と野獣の舞台に選ばれたのも納得。そんなディズニーの目に留まることとなったコルマールを紹介します。

  • フランスの有名なチョコレート20選!ご褒美・お土産におすす...

    フランスのチョコレートについて案内します。ベルギー同様にフランスのチョコレートも至高のものが多く、専門のチョコレート職人(ショコラティエ)の味が堪能できます。日本も手に入るフランスの有名チョコレートを20か所厳選しました。

このエリアの新着記事
  • フランスの有名なチョコレート20選!ご褒美・お土産におすす...

    フランスのチョコレートについて案内します。ベルギー同様にフランスのチョコレートも至高のものが多く、専門のチョコレート職人(ショコラティエ)の味が堪能できます。日本も手に入るフランスの有名チョコレートを20か所厳選しました。

  • ここだけは外せない!フランス・リヨンでまずは押さえておき...

    フランス南東部にあるリヨンはフランス第二の都市。中世の街並みが残る石畳の旧市街や郷土色豊かなブション(リヨンの郷土料理を楽しめるビストロ)も魅力です。美食の街とも呼ばれ、華やかパリとはまた違った魅力を持つ街です。そんなリヨンでまずは押さえておきたい観光スポットをご紹介します!

  • フランスのお洒落なおすすめホテル15選!

    ヨーロッパ旅行でも人気なフランス!観光客の数は世界一だそう。美術館、世界遺産、大聖堂もそれぞれ有名な観光名所が多数あります。フランス料理やワインも最高ですね。そんな魅力溢れるフランスの数多くあるホテルの中でちょっと贅沢な高級ホテルを紹介します。

  • フランス・リヨンの人気観光スポットおすすめ7選!歴史地区で...

    フランス第二の都市であり世界遺産に登録された街リヨン。名前は聞いたことがあっても実は何があるかよく知らないという方も多いのでは?かつて絹産業で栄えたリヨンは美しい街並みや心地よい気候のおかげでフランスらしさを満喫できる場所。美食の街でもあり美味しいフランス料理に出会えます。では、さっそくリヨンの見どころをご紹介します。

  • フランス・ニースでおすすめの本場ニース料理レストラン3選!...

    150年前までイタリアの領土だったというフランス・ニース。地理的にもイタリアにほど近く、食文化もイタリアの影響を大きく受けているんだとか。そんな街中で美味しい「ニース料理」が食べられるレストラン3選を紹介します!

  • ヴェルサイユ街でショッピング!お土産も買えるエリア別おす...

    ヴェルサイユと聞くとすぐに思い浮かぶのが宮殿。ですが、その城下町であるヴェルサイユの街もまた華やかに栄えていたんです。王宮文化を思わせる優雅な街並みや、有名メゾンのショッピングを楽しめる街・ヴェルサイユの魅力をご紹介します。

  • フランス・コルマールの観光名所まとめ!美女と野獣の舞台と...

    戦火を逃れ今も昔のままの姿を残すフランス東部の町コルマール。アルザス地方特有のコロンバージュ様式の建物は、まるでおとぎの国へ来たのかと錯覚するほどの美しい町並み。美女と野獣の舞台に選ばれたのも納得。そんなディズニーの目に留まることとなったコルマールを紹介します。

  • フランス在住者が教える!南仏ニースでのビーチの特徴とビー...

    ニース空港へ着いたら、大抵の方はタクシーやバスでニース市内へと向かわれるかと思います。その時に目に飛び込んでくるニースの海の青さには、誰もがきっと感動してしまうはずです。そんなニースのビーチを100%楽しむ、とっておきの情報をお伝えします。

  • フランスの人気お土産ランキングTOP15!外さない人気のフラン...

    フランスのお土産はグルメやファッションと選ぶのにも迷ってしまいます。フランスらしいお洒落なアイテムに、贈られたお友達やご家族も気持ちもワクワクすることでしょう。大切なお友達や自分用にも買いたい、お洒落で持ち運びしやすいフランスのお土産をまとめました!

  • インド洋に浮かぶリゾート地!フランス領のレユニオン島の魅力

    インド洋に浮かぶフランスの海外県・レユニオン島は、サトウキビ・バニラ・コーヒーなどの生産と観光業で栄える小さな島です。フランス人や旅慣れた人だけが訪れていた穴場のリゾート地は、2010年に世界遺産に登録された島の尖峰群の他にも魅力がいっぱい!今回はそんなレユニオン島の見どころをご紹介します!

このエリアの人気記事
今週の人気記事