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2645679views日本全国で行われている面白いお祭りをご紹介します。被り物をかぶったり、泥をかけ合ったりと、普段のお祭りのイメージとは異なった雰囲気のものが多いのですが、それぞれはっきりとした意味を持っています。何百年も前から行われていたり、重要文化財に指定されていたりするものもあり、どのお祭りも一見の価値ありです。
日本のお祭りというと、舞踊やお神輿、和楽器の演奏など華やかで上品、それでいて人情味があって温かいといったイメージがあります。江戸時代の人たちはそういった美意識を粋(いき)という言葉で表現しました。しかし実は、とても粋とは言えないような面白いお祭りも日本には存在します。
例えば全身泥だらけの人間がほかの人を追い回したり、カエルの被り物をして坂道を駆け上がったり、上品とはかけ離れたお祭りや、祭壇の前でお尻を振りまくる、一見下品と取られかねないようなものも。知らない人から見るとふざけているように見えるかもしれませんが、どれもその地域に受け継がれた正式な作法で行われている伝統行事です。今回はそんな変わった日本のお祭りを14個ご紹介いたします。
今回ご紹介するお祭りの中には、文献で追えないほど昔から続いているような長い歴史を持ったものもあります。また、ほかに類を見ない特徴を持つことから、国の無形重要文化財に指定されているものが多いのも特徴。日本国内のみならず海外からも注目を浴びていて、世界中から観光客が訪れるようなものもあります。
日本のお祭りは地元の人たちのために開催され、地元の人が中心となって盛り上がるものがほとんどですが、中には観光客も参加できるものも。ただし、汚れたり怪我をする可能性のあるお祭りもあるので、トラブルを防ぐためにも事前にある程度の情報を調べていくのが良いでしょう。また参加するために費用がかかったり、事前申し込みが必要なものもあるので、その点にも注意してください。
笑い祭とは、和歌山県西側にある日高川町で行われるお祭りです。丹生(にう)神社で行われるため、別名「丹生祭り」とも呼ばれます。派手な衣装を身にまとって顔を白塗りにし、さらに朱色で「笑」という文字を頬に書き、無理やり面白い顔にされた笑い翁が、鈴を振りながら「笑え笑え」と人々に笑顔を強要しつつ、街を練り歩きます。
もともとは丹羽神社の祭神である丹生都姫命が神様の会議に寝坊して出席できなかったのを、人々が慰めたのが始まりだと言われています。江戸時代から続くと言われている伝統的なお祭りで、県の県無形民俗芸能にも指定されています。このお祭りのおかげで丹生神社は、ガイドブック出版社であるロンリープラネット社の「世界で最も幸せな場所」トップ10に選ばれ、日本のみならず世界でも有名になりました。
笑い祭に笑い翁が登場するのは11時頃ですが、お祭り自体は朝9時ごろから始まります。最初に道案内役の鬼が登場しますが、このとき見物人が道路にはみ出ていると容赦なく棒でたたかれるので注意。そうして翁や神輿の通り道を確保したあと、獅子舞が舞い踊り、そのあとでようやく笑い翁が登場。笑い翁の後には笑い男と呼ばれる紋付き袴姿の男性たちや神輿が続き、どんちゃん騒ぎをしながら丹生神社まで練り歩きます。
神社に到着した後も太鼓の演舞や、幟上げ、雀踊り、獅子舞などがおこなわれ、にぎやかなお祭りが夕方の5時ぐらいまで続きます。お祭りは毎年10月に行われ、当日には観光客も集まりますが、何より地元の人たちが楽しそうに騒いでいて、1年に1度心待ちにされているお祭りだということが分かります。
御柱祭は日本全国にある諏訪神社の総本山である諏訪大社で、7年に一度行われるお祭りです。諏訪大社は本殿を持たず、諏訪湖と呼ばれる湖の周辺に4カ所の境内を持っていて、御柱祭ではこの境内の巨大な柱を4本ずつ、計16本入れ替える作業が行われます。
「御柱」と呼ばれる巨大な柱には樹齢200年以上のモミの木が使われるため、それを山から切り出し、人力だけで境内まで引っ張っていきます。柱1本につき約2000~3000人で運ぶので、長さ15メートル以上、重さ約10トンにもなる巨木が山を滑り降りたり街中を通っていく様子は大迫力。途中、直角に曲がらなければならない道や幅約40mもある川などの難所もあって、大声で声を掛け合いながら進んでいきます。
御柱祭は干支が寅と申の年に行われます。平安時代から続いていると言われているお祭りで、戦時中も継続して行われていました。地元ではその年の御柱祭が終わったら、次の御柱祭に向けての貯金をスタートさせるほど、地域の人にとって大切なお祭りなのだそう。
里曳きのときには屋台が立ち並び、行列や花笠踊りなども行われてとにかくにぎやか。各家庭でも御柱を引く男たちのために毎日ごちそうが振舞われます。お祭りがにぎわうのは山から柱を切り出して下す「山出し」と境内に向かって街中を引く「里曳き」の時期なのですが、それが境内4カ所分順番に行われるため、その年は御柱祭一色になります。地域によってどの柱を担当するのかが決められているため一般人は参加できませんが、里曳きの様子を見たり、街の雰囲気を味わうだけでも面白いです。
次にご紹介するのは埼玉県秩父市で行われる龍勢(りゅうせい)祭りです。計30以上もの手製のロケットを打ち上げるお祭りで、空に打ちあがるロケットがまるで龍の勢いのようだということで、この名前がついたと言われています。いつ頃始まったお祭りかは謎ですが、織田信長が安土城を築く前年の1575年には既に行われていたということが記録で分かっています。
2011年に人気アニメで龍勢が大きく取り上げられたことをきっかけにアニメファンの間で話題になり、聖地巡礼の一環として日本各地からこのお祭りを見に訪れるファンが増えたそう。アニメとコラボした龍勢も打ち上げられています。また2018年には国の重要無形民俗文化財に指定され、全国規模で有名なお祭りになりました。空高く上りきった後に色煙や落下傘などの仕掛けが発動するように工夫されている龍勢も多いため、個々の龍勢によって仕掛けが異なるので飽きずに楽しめます。
龍勢には花火と同じように流派があり、現在は20を超える流派があります。毎年くじ引きで打ち上げ順を決め、打ち上げ順が決まったころから各流派で準備が始まります。打ちあがる龍勢はもちろん、打ち上げるための火薬筒まですべてが手作り。1~2カ月の準備期間を必要とするなかなか大変なイベントです。どんなに丁寧に作っても、当日の天気や風向きなどで龍勢の打ちあがり具合は変わってきてしまうそう。うまく飛ぶか飛ばないか、飛ばすそのときまでわからないのが、見ている方からしてもドキドキして面白いです。
龍勢祭りは毎年10月に椋(むく)神社で行われます。見物は無料ですが、有料の桟敷席があります。龍勢を打ち上げる前に、打ち上げ場所まで龍勢を運ぶ「担ぎ出し」が行われるのですが、その際は一般の人でも龍勢を間近で見られるのでおすすめ。会場の道路を通るので、お目当ての流派がいる場合、打ち上げ順のいくつか前に、道路脇でスタンバイしておくと良いでしょう。
茨城県水戸市の飯綱(いいつな)神社という、日本三大火防神社の一つである愛宕神社の北側にある神社で行われるお祭りです。参加者がひたすら悪態をつきあうという変わったお祭りで、日本三大奇祭のひとつにも数えられています。天狗に扮した氏子がお供え物を祠にささげるのですが、それを参加者同士、悪態をつきながら奪い合います。お供え物を持ち帰ると無病息災・家内安全・五穀豊穣などのご利益があると言われていることから、参加者はみんな必死。
個人名を出しての悪態は禁止など最低限のルールはありますが、基本的には言いたいだけ悪口を言っていいお祭りなので、けんかにはなりません。参加者の中には大声を出してすっきりできたという人もいて、日頃ストレスがたまっている人にはおすすめかもしれません。
神官や天狗(てんぐ)がお供え物を祠まで運ぶ時から参加者による「早く歩け」「もたもたすんな」といった悪態合戦が始まります。神官が拝み終わる前に手を出すなどのルール違反をすれば容赦なく天狗に青竹でたたかれるので注意が必要。供え物の争奪戦が終わった後には境内で天狗から菓子や餅がばらまかれ、それをまた悪態をつきながら奪い合います。最後にはみんなで「ばかやろう」と叫んで締める、日本でも類を見ない面白いお祭りです。
悪態まつりは毎年12月に行われます。年末前に気分をすっきりさせるため、遠方から参加する方もいるそう。近くの愛宕神社も境内から見える景色が美しかったり、本殿に古文書が飾られていたりと見ごたえのある神社で、時間がある方にはぜひおすすめのスポットです。
パーントゥ・プナハは沖縄の宮古島で行われる厄払いのお祭りです。全身に泥を塗りたくった3体の神様が現れて人々を襲うのですが、この泥の臭いが強烈で、一度体に塗られると数日は臭いが取れないと言われています。この泥を塗る行為は嫌がらせではなく、悪霊払いや無病息災を祈ってのこと。
体だけではなく、服やカメラ、道端の車などにも容赦なく泥を塗りたくっていきます。新築の家にあがりこんで泥を塗っていくこともありますが、これは新築にとりつく悪霊を払って縁起を付けるため。人々の幸せを願っての行為です。とは言っても全身に泥を塗りたくりつるを巻いた神様は見た目が恐ろしく、その上臭いので、子供たちにとっては恐怖の存在。秋田のなまはげのような感じで、神様に会った子供たちは号泣して逃げまどいます。このお祭りが面白いと思えるようになるのは大人になってからかもしれません。
パーントゥ・プナハは例年10月に宮古島北部の島尻地区という場所で開催されます。日が暮れるころから3体の神様が現れて人々を襲い始め、夜8時頃まで大騒ぎが続きます。警察官やパトカー、もちろん観光客も例外ではなく襲われ泥まみれにされるのですが、近年はOk祭りの趣旨を理解していない観光客との間でトラブルになることもあり、服や車を汚されたことに怒った観光客が神様に暴行を加えようとしたこともありました。
パーントゥ・プナハは見世物ではなく、日本の重要無形民俗文化財にも指定されている地域の大切な伝統行事です。地域の伝統文化を守っていくためにも、普段住んでいない土地のお祭りに参加したり見学したりする際には、お祭りのルールや歴史、その土地の文化等をある程度調べてから行くようにしましょう。
群青おどりは岐阜県の郡上郡八幡町で開催される盆踊りの一種なのですが、面白いのは30夜以上にわたって続けられるという点。日本一長い盆踊りとして知られています。7月から9月にかけて、10曲の演目を毎晩のように踊り続けます。中でも見どころはお盆の頃に開催される「徹夜踊り」。4日間、夜8時ごろから朝の4時5時まで夜通し踊り続けます。
江戸時代に領民の親睦のために開催されたのが起源と言われていて、第2次世界大戦中にも1夜限定でしたが踊り続けられていました。当時から身分関係なくだれでも参加できるお祭りで、現在も地元住民だけでなく誰でも飛び入り参加OKとされています。男性も女性も関係なく参加でき、服装の規定などもないのですが、浴衣で参加した方が気分が上がります。呉服店でレンタルを行っているところもあるため、当日急に参加することになったときには利用すると良いでしょう。
群青まつりは見る祭りではなく、参加する祭りだと言われています。地元の人たちと一つの円になって踊っていると、知らない人たちの中でも不思議と一体感が味わえます。徹夜踊りが開催される日には無料の休憩所が開放されたり、海外の観光客のために英語のボランティアガイドが常駐していたりと、参加者にとってはいたれりつくせり。みんなで楽しもうという地域の方の心遣いが伝わってきます。
会場は毎日変わり、ひと夏で町を一周するようになっています。宿の場所を決めるためにも事前にホームページで調べておくと良いでしょう。交通規制が敷かれる場合もあるのでご注意ください。観光客が見物できるお祭りは多くても、参加できるお祭りは珍しく貴重です。重要無形民俗文化財にも指定されているこのお祭りに行く機会があれば、踊り手としてぜひ参加してみてください。
ガマ祭は毎年夏に茨城県つくば市の筑波山神社で行われるお祭りです。ガマとはガマガエルのことであり、参加者がカエルの被り物をかぶって筑波山の門前通りを駆け上がるガマレースが開催されます。なんでもガマ祭はガマの油を売って成功した商売人が、ガマの供養と仲間の油売りや今後の商売繁盛を願って開催したのが起源と言われています。
現在でもお祭り当日には、人々の無病息災や商売繁盛を祈って境内で神事が執り行われるほか、ガマガエルの放流やガマの油売りの口上の実演なども行われます。日本でもほかに類を見ないガマガエル尽くしの面白いお祭りということで有名。天下の奇祭とも呼ばれていますが、つくば市長も参加するつくば市のメインイベントのひとつです。
ガマレースに参加するには、事前のエントリーが必要。年代、性別で分けた部のほかにお父さんの部やお母さんの部、男女ペアで走るカップルの部などがあり、各部門の上位3位は表彰されます。優勝者には豪華賞品も。参加するには費用がかかりますが、レース時にかぶるオリジナルがまマスクがもらえます。総勢700名以上が参加するイベントで、芸能人やご当地キャラクターも登場し、当日は大変盛り上がります。
当日は門前通りが歩行者天国になるので、近くを通る方は注意してください。地方から参加する人のために、がまレース参加確約の宿泊プランなどもあるので、興味のある方はぜひ検討してみてください。詳細はつくば観光コンベンション協会のホームページに記載されています。
名前からして面白い「尻振り祭」は、福岡県北九州市の井手浦公民館前で毎年1月に行われます。春の農作業を始める前に豊作を願って行われるお祭りで、宮司や2人の当番が祭壇の前で掛け声に合わせて左右に大きくお尻を振ります。昔、神様が大蛇を退治した際に落ちた尻尾が跳ね回り、その年は10数年ぶりの豊作になったためにこのようなお祭りが始まったと言われていて、宮司たちは大蛇の尻尾を真似て尻を振ります。
尻を大きく振れば振るほどその年は豊作になると言われているため、観客からは「左右に大きく」「もっと振れ」といったヤジが飛んでにぎやか。最後には大蛇に見立てた藁を刀で切って終わるのですが、藁の中には干し柿が詰まっていて、これを食べると1年健康でいられるとの言い伝えが。そのため大人も子供も藁に群がって干し柿を取り合います。尻振り祭に参加される際は、尻振りを見学するだけでなく、干し柿を手に入れるところまでしっかり楽しんでください。
尻振り祭は、かつては井手浦地区の人々が老若男女かかわらず参加していたお祭りですが、地域の高齢化が進み存続が危ぶまれる限界集落となってしまったため、現在は井手浦尻振り祭保存会が祭りの開催を引き継いでいます。このように地方の祭りは後継者不足などの問題で絶滅の危機に立たされているものが多いというのが現状。
井手浦地区の尻振り祭のように地域以外からの協力を得て、ようやく実施されるお祭りも増えてきています。多少無理をしてでも祭りを開催することで、伝統を守るという以外にも、地域が活気を取り戻したり、新しくその地域の魅力に気づく人が現れたりするかもしれない、というメリットがあります。日本のお祭りは地域の人にとって準備や開催に手間や時間を要するものですが、経済的効果や観光客を連れてきてくれるものでもあり、切っても切れない関係にあります。
裸祭りは参加者が裸に近い格好になって行うお祭りで、日本全国で行われています。裸の男たちが松明(たいまつ)を持って行進するものや神輿を担ぐものなど、地域によってさまざまな形式の裸祭りがありますが、中でも有名なのは愛知県稲沢市の国府宮(こうのみや)で行われる裸祭り。旧正月の13日に行われ、その年の厄男を中心とした8,000人以上の男性が毎年参加する大規模なお祭りです。
志願者の中から神男と呼ばれるその年の厄をすべて担う男性をくじ引きで決め、神男は厄災が詰まった土を背負って門から本殿まで走るのですが、神男に触れると厄落としになると言われているため、参加者の男性たちはその間、神男に触れようと8,000人が一気に押し寄せてもみくちゃになります。死者が出ることもあり、面白いというよりも迫力に圧倒されるようなお祭りですが、1000年以上続く伝統的なもので、見る価値は十分にあります。
国府宮での裸祭りの正式名は儺追神事(なおいしんじ)といって、奈良時代に天皇の命令で全国の国分寺で厄払いが行われたのが起源と言われています。裸祭りに参加できるのは残念ながら男性のみ。参加者は裸にさらしのみで祭りに参加するのですが、日本のお祭りでは女性の裸は良しとされていないことが多く、女性は参加できません。また危険なお祭りなので、けがをする可能性が高い子供やお年寄りの参加もNGです。
参加できない人は儺追布(なおいぎれ)と呼ばれる布に、住所・氏名・生年月日を書いて裸祭りに参加する男性に預け、厄除け祈願の代役をお願いすることができます。裸祭りへの参加を希望する男性は、稲沢市の知り合いに相談するか、会場近くの和陽館という宿に連絡すると良いようです。お祭り参加中は裸にさらしという格好ですが、電車やバスに乗る際には膝下ぐらいまで隠れる上着が必要という点にも注意してください。
六郷の竹打ち祭は、秋田県美郷町で毎年2月に行われる「六郷のカマクラ」という豊作祈願の祭りのラストに行われる行事です。町全体を南北の2軍に分け、両軍の成人男性が7~8メートルの竹を持って本気でたたき合うという、ヘルメット必須の危険なお祭り。
大勢の男性が声を上げながら竹が裂けるほどに本気で戦う様子はまるで時代劇の合戦のシーンのようで迫力満点。計3回戦が行われ、相手の陣地を押した方が勝利となります。2回戦と3回戦の間には町民の願いごとを書いた天筆(てんぴつ)が燃やされ、燃え盛る炎の中を囲んで3回戦が行われます。冬の寒い時期に行われるため、雪が降っている場合も多く、白い雪が降る中、炎が燃え上がる様子は幻想的。炎に煽られて参加者の士気も高まり、ラストの3回戦は特に盛り上がります。
竹打ち祭に参加・見学に行く際には防寒着必須。夜の8時くらいに行われるため、秋田ではマイナス10度ほどになることもたびたびあります。またヘルメットのレンタルなどは行っていないので、自前のものを持っていきましょう。ヘルメットがないと参加できません。地域外の人が参加する場合は六郷カマクラ保存会事務局の担当者に問い合わせてください。
海外でも日本の危険な祭り、面白い祭りとして紹介されているようで、外国人観光客が参加することもあります。竹打ち祭り以外にも、六郷のカマクラの期間中はさまざまなイベントが用意されています。子供でも参加できる竹打ち体験やお酒の試飲もできる蔵開きイベントなどがあり、また出店で地元の味を楽しむこともできるので、時間がある方はお昼頃から行って楽しむのがおすすめ。
蘇民祭は裸祭りの一種で、無病息災や五穀豊穣を願って岩手県の南部を中心に日本各地で行われているお祭りです。なかでも岩手県奥州市の黒石寺で行われる黒石寺蘇民祭は、国も選択無形民俗文化財にも指定されていて有名。蘇民祭で最も盛り上がるのは、ふんどし姿の男性たちが蘇民袋と呼ばれる護符が入った袋を奪い合うイベントです。
護符や護符が入った袋を手にすると厄災を免れると言われていて、最後に袋の首に近い部分を持っていた人が勝利となります。袋の争奪線に参加するには祭り案内所での登録が必要。蘇民祭当日の午前0時から登録開始となりますが、未登録者は参加できないので気を付けてください。袋の争奪戦には男性しか参加できませんが、袋に入った護符を境内で拾うイベントには女性も参加できます。
黒石寺蘇民祭は夜10時ごろから始まり、袋争奪戦を行なう前に川で身を清めたり、薬師堂や妙見堂をお参りしたりします。その後燃えている割木を踏んで火の粉を浴びるシーンもあるため、参加者は下帯だけでなく足袋も準備しておく必要があります。もともとはふんどしもつけずに全裸で行われていたイベントですが、観光客の増加に伴って2007年以降はふんどしの着用が必須になりました。
また2008年には半裸の男性の写真が載った蘇民祭の宣伝ポスターが、セクハラに該当する可能性があるとしてJRでの掲示が拒否され、それ以降蘇民祭のポスターには男性ではなく、黒石寺の写真が使われることが多くなりました。このように伝統的なお祭りでも時代の変化に合わせて形を変えていくということがあり、伝統を守るかそれとも祭りの継続自体を優先するかということも、開催者の間で問題となっています。特徴のある面白いお祭りはぜひ残してもらいたいものです。
滋賀県米原市の筑摩神社で行われているお祭りで、数え年8歳前後の少女8人が狩衣(かりぎぬ)姿に鍋をかぶった面白い格好をして、お旅所から神社までを練り歩きます。筑摩神社はもともと食物に関係のある神様を祀った神社で作物や魚介類などをお供えする習慣があり、供え物を運ぶために鍋が使用されたことが鍋をかぶるようになった理由ではないかと言われています。
昔は少女ではなく妙齢の女性が過去にお付き合いをした男性の人数分の鍋をかぶって歩くという形でしたが、江戸時代にわざと少ない数の鍋をかぶった女性に天罰が下って鍋を落とされ、笑いものにされて自殺した、という事件が起こり、いったんはお祭り自体が廃止になりました。その後、町の人たちの嘆願によって、7,8歳の幼児による行列ならばと許可され、現在の形になったと言われています。
鍋をかぶった少女は鍋冠乙女(なべかんむりおとめ)と呼ばれますが、この鍋冠乙女のほかにも行列には、楽人や神官など計200名ほどが参加します。紋付き袴や狩衣などの衣装を着て、太鼓を打ち鳴らしながらゆっくりと神社に向かう様は美しく、米原市の無形民俗文化財にも指定されています。はじまりは平安時代ともいわれており、当時書かれた有名な歌物語である「伊勢物語」の文中にも表記があります。
お祭りは毎年5月に行われ、行列は14時頃に琵琶湖畔のお旅所を出発し、筑摩神社の本殿に到着するのは15時半から16時頃。見学は無料で、当日は日本各地から観光客が訪れます。行列を見たい場合は琵琶湖脇の湖岸道路から見るのがおすすめです。終着点の筑摩神社周辺には駐車場がないため、駅から徒歩で来るか、レンタサイクルやタクシーを使うのが良いでしょう。
平方のどろいんきょは埼玉県上尾市の上宿地区で行われるお祭りで、通常は人々が担ぐお神輿をわざと泥の中に投げ入れたり転がしたりする、日本でも珍しい形式のお祭りです。その時にはねる泥を体に浴びれば、厄除けや無病息災のご利益があると言われています。
お神輿の途中で立ち寄る神酒所(みきしょ)と呼ばれる飲み物等を振舞う民家を決めておき、お神輿が来る前にわざわざ水をまいて泥だまりを作ります。お神輿は数カ所の神酒所に立ち寄り各所で泥だらけにされるほか、川に入れられたりもするので、終着点である八枝神社につく頃には水浸しでお神輿に付けられた提灯(ちょうちん)もボロボロ。お神輿自体は途中で壊れたりしないように頑丈な白木で作られていて、提灯以外の装飾はなし。地味で珍しい見た目ですが、どろいんきょの内容を知れば納得です。
どろいんきょでは観光客はお神輿の担ぎ手として参加することはできませんが、見学は可能です。しかし、お神輿を泥まみれにする際に、担ぎ手にもわざと泥をかけたりすることがあり、見ている人や取材に来ている人までも泥だらけになる場合がほとんど。したがって見学に行く際は汚れても構わない格好で行くか、レインコートやビニールなどを使って完全装備をしてください。
どろいんきょの歴史には不明な点が多いのですが、八枝神社の日記の、明治42年6月の欄にお神輿の修繕に関する記載があり、このころには既にどろいんきょが行われていたと考えられています。また隠居したお神輿を出してきて泥だらけにした、あるいは隠居した人たちがお神輿を余興で担いだことから、どろいんきょという名前がついたのではないかとも言われています。神様の乗り物でもあるお神輿を泥だらけにするというほかに類を見ない面白いお祭りで、平成23年に埼玉県指定無形民俗文化財に指定されました。
ひげなで祭りは千葉県香取市の側高(そばたか)神社で毎年1月に行われているお祭りです。お祭りを執り仕切ったり、手伝ったりする祭り当番を次の人に引き継ぐための行事で、新旧の当番が参加します。現在の当番が西側に、新当番が東側に向き合って座り、お酒を飲みあいます。決まった杯数のお酒を飲んだ後、西側の当番がひげをなでるとさらにお酒を追加で飲むというルール。
新当番はひげをなでられたら断れず、何杯でも飲まなければならないのですが、すすめたほうも同じ分だけお酒を飲みます。何杯飲むかはひげをなでる側にかかっているため、そちらがお酒に強い人で新当番が下戸だと大変です。これを西側の当番が飲めなくなるまで7組分繰り返すのですが、見物人からも「もっと飲め」などといったやじが飛びかって盛り上がります。
ひげなで祭りは今から約800年前、日本の鎌倉時代に五穀豊穣や子孫繁栄を願って始められたと言われています。おそらく紋付き袴にカイゼルひげといった面白い格好も、当時の人を再現しているのではないかと思われます。ちなみに当番のひげは自前の人もいますが、たいていは付けひげ。
ひげなで祭りの前には地元の少年たちが軍艦マーチを演奏したり、空には花火が打ち上げられたりして、大変盛り上がります。また追加のお酒を注ぐのは子供たちの役割なので、その関係者も含めて当日はたくさんの参拝客が訪れ、神社は人でいっぱいに。寒い時期に行われるお祭りですが、境内で甘酒も振る舞われ、寒さを忘れて楽しめます。香取市の無形民俗文化財に指定されている行事です。
いかがでしたか。日本には京都の祇園祭や青森ねぶた祭りなどの美しく風流を感じるようななお祭りのほかに、通常では考えられない面白いやり方で行われるお祭りもたくさんあります。どのお祭りもその土地の歴史や伝統を引き継いで行われているもので、一見ふざけているように見えてもはっきりとした意味が込められています。今回ご紹介した中で気になるお祭りがありましたら、ぜひ現地に行って生で見たり参加したりしてみてください。
ただし、けがをしたり汚れる可能性のあるお祭りも多いため、参加する際はルールを守り、安全には十分に配慮してください。またトラブルを避けるためにも事前に申し込みの要否や会場周辺の交通規制等の情報についても調べておくのがおすすめです。
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