イタリア・シエナは見どころ満載!世界遺産の歴史地区と人気の競馬「パーリオ」

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イタリアの中部トスカーナ州の地方都市シエナ。かつてはフィレンツェにも対抗できるほどの強大な力を持った都市国家でした。丘の上に築かれたその町には、今も当時の面影が残っています。そこで今回は、世界遺産にも登録されているシエナの歴史地区の魅力についてご紹介したいと思います。

1. 丘の上に栄えた中世の都市国家

イタリア中部の中心都市のひとつフィレンツェから、南に約50km。中世の都市国家の面影を色濃く残している町がシエナです。1995年には、丘の上に築かれた旧市街が「シエナの歴史地区」として世界遺産にも登録されています。

シエナが最も繁栄していたのは13~14世紀の頃でした。商業や金融業、手工業が中心ということもあり、フィレンツェとは敵対していましたが、それでもその頃のシエナには、フィレンツェにも負けないだけの力がありました。

実際、1260年に行われた「モンタペルティの戦い」では、なんとフィレンツェ軍に死者1万人、捕虜にされた兵士1万5千人という大打撃を与えています。旧市街に今なお残されている見事な建物や、シエナ派絵画の傑作群は、そんな繁栄の時代に作られたものです。

とはいえ、繁栄の時代がいつまでも続くわけでもなく、結局のところシエナは、メディチ家が君主となったトスカーナ大公国に併合されてしまいます。1559年のことでした。

シエナ (Siena)
アクセス:
フィレンツェから普通列車で約1時間半。
 ローマからだと、3~4時間かかります。
 シエナ駅から旧市街までは約2km、
 バスで5~7分程度です。

2. 大聖堂の見どころ

横縞模様の華麗な外観

丘に上に築かれたシエナの旧市街。その一番高い所に建てられているのが、大聖堂(ドゥオーモ)です。着工は1196年で、完成は1215年(鐘楼は1313年)。また、破風のモザイクは19世紀後半のものです。

ゴシック様式の傑作といわれていますが、同じゴシックでも、垂直方向へと、つまりは上方へと天高く聳えるのを好むドイツのゴシックとは異なり、横縞模様にすることで、垂直方向と水平方向のバランスを取っているところに特徴があります。

大聖堂の内部の様子を撮影したものですが、こちらも白と黒の大理石を使いながら、壁はもとより束柱(たばねばしら)まで、横縞模様で仕上げられていることがわかります。

床に描かれた56点の図柄

パッと見ると、何かじゅうたんでも敷いてあるように見えますが、もちろん大理石の上に描かれた図柄です。線だけ、あるいは色大理石を使った象嵌細工(ぞうがんざいく)など、技法はさまざまですが、旧約聖書の場面などが56点描かれています。

ただし、床が傷むのは防止するため、期間限定でしか見られません。

ピッコローミニ家の図書室

堂内には彫刻や絵画の名品が多数置かれていますが、中でも注目したいのが、ルネサンス様式で仕上げられた「ピッコローミニ家の図書室」です。ピントゥリッキオ作のフレスコ画が何と言っても目を引きます。

なお、建物外部の彫刻など、痛みの激しいものに関しては、たいていコピーに置き換えられています。原作は大聖堂の隣のドゥオーモ付属美術館にありますので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

大聖堂 (Duomo)
住所:
Piazza del Duomo 8
アクセス:
旧市街のバスターミナルから徒歩約15分
開館時間:
 3/1 - 11/2 10:
30~19:00
 11/3 - 2/28 10:
30~17:30
 (12/26 - 1/6は、10:
30~18:00)
 ※土日は期間を問わず、10:
30~17:30
電話番号:
0577-286300
料金:
 大聖堂とピッコローミニ図書室 4ユーロ
 (床の公開中は、7ユーロ)
 以下の期間は2ユーロ
  11/1 - 12/24、1/7 - 2/28

3. カンポ広場の見どころ

世界一美しい広場

大聖堂から坂道を下ってきたところにあるのが、世界一美しい広場とも言われる「カンポ広場」です。周囲を建物が囲んでいるだけでなく、プッブリコ宮のところを起点として扇形に広がっているのが特徴です(しかも傾斜までついています)。

旧市街の中心ですから、レストランやカフェなど食事処も並んでいます。

カンポ広場 (Piazza del Campo)
住所:
Piazza Il Campo
アクセス:
旧市街のバスターミナルより徒歩約10分
 大聖堂から東へ約200m

プッブリコ宮(市庁舎)

カンポ広場のそばに、大きな塔をもった建物がありますが、それがプッブリコ宮です(1320年完成)。市庁舎ではありますが、一部が市立美術館になっていて、「世界地図の間」にあるシモーネ・マルティーニ作のフレスコ画『荘厳の聖母』や、「平和の間」のフレスコ画『善政の効果』『悪政の効果』(ロレンツェッティ作)はことに有名です。

また、102mの高さを誇るマンジャの塔に上れば、シエナの旧市街が一望のもとに見渡せます(1348年完成)。ただし、階段が500段ほどありますので、足に自信がないという方には、プッブリコ宮3階部分からの眺望をオススメします。

プッブリコ宮 (Palazzo Pubblico)
住所:
Piazza del Campo 1
アクセス:
旧市街のバスターミナルより徒歩約10分
 大聖堂から東へ約200m
開館時間:
 ≪美術館≫
  3/16 - 10/31 10:
00~19:00
  11/1 - 3/15 10:
00~18:00
  (1/1 12:
00~18:00)
 ≪マンジャの塔≫
  3/1 - 10/15 10:
00~19:00
  10/16 - 2/28 10:
00~16:00
  (1/1 12:
00~16:00)
定休日:
 美術館 12/25
 マンジャの塔 12/25、8/16、雨天閉鎖
電話番号:
0577-41169
料金:
 美術館 9ユーロ
 マンジャの塔 10ユーロ

4. パーリオに熱狂する人々

パーリオとは?

毎年7月2日と8月16日にカンポ広場で行われるのが、シエナ伝統のお祭パーリオ(Palio)です。祭りは17あるコントラーダ(地区)ごとに、中世の頃の衣装を着て練り歩くことから始まります。

行列の最後。4頭の牛に引かれた牛車が登場しますが、そこに載せられているのが、シエナの守護者・聖母マリアを描いた旗です。祭りのメインイベントともいえる地区対抗の競馬レースの勝者には、この旗が与えられることになっています。

夏の炎天下のもと、カンポ広場は満員状態です。各地区の行列を見物している時はまだ静かなものですが、競走馬が登場する頃になると、徐々に会場の熱気は高まっていきます。

ちなみに、レースに出場するのは17のコントラーダのうち、抽選で選ばれた10地区だけ。広場を3周して勝負を競います。

3分間の大いなる熱狂

見てのとおり、騎手が乗っているのは裸馬。馬場も公営競馬のように芝生というわけではありませんから、落馬もありますし、運が悪ければ命を落とす騎手も出てきます。ただし、中心はあくまでも馬ですから、騎手を振り落とした馬が一等になっても勝ちは勝ち。そこが普通の競馬とは違うところです。

ほんの3分程度のレースですが、その間の人々の熱狂たるや、セリアAのサッカーどころではありません。ぜひ一度、あなたも現地で体験してみてください。

最後に

以上、簡単ではありますがシエナの歴史地区について、その魅力の一端を紹介してみました。ローマからの鉄道旅行だと、接続の関係で時間が掛かってしまいますが、フィレンツェからであれば、気軽に足を延ばせるのではないでしょうか。

中世に覇を競ったシエナとフィレンツェ。この二つの町を、ちょっとばかり比較してみるのも面白いかもしれませんね。

Caroll

昔からのクラシック音楽ファンということもあって、やっぱりヨーロッパが好きですね。あと歴史も好きなので、「旅と歴史」という視点から、いろいろと書いていければと思っています。どうぞ、よろしく!

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